不今


これはこれ。
あれはあれ。
これはあれじゃない。
これはこれじゃないものじゃない。
残りはこれか、またはこれじゃないもの。
すべてはあれか、またはあれじゃないもの。
あれでもなくこれでもないなら、これでもなくあれでもない。
あれでありこれであるなら、それ
自身である。
それ自身であるものは、あれかもしれず、これではないし、
あるいはこれはあれじゃない。
         これはあれへときえ、あれはこれへと失えた。僕らは言う
                       神さまが息を吹きかけたって。

これはあれへ去り、あれはこれへ去り
僕らはどこからも出てゆけず どこへもたどり着けない。
これはあれへと去った。僕らは聞く「どこへ?」
           歌いかけられた「そこよ」
これはそこから出てきた。これは何?これは
あれだ。
これはあれである。
あれはこれである。
そこにこれとあれがある。
そこはこれに失せ、これはあれに失せ、あれはそこに失せた。
僕らは見たが、見出さなかった。
あそこにはこれとあれが立っていた。
あそこはここじゃない。
あそこにあれ。
そこにこれ。
でも今は あそこに これとあれ。
だけど今は そこに これとあれ。
僕らは悲しくて考えて苦しむ。
今は どこだよ?
いまはそこ、いむはあそこ、いまはそこ、いむはそことあそこ。
これはあれだった。
そこはあそこである。
これ、それ、そこ、あそこは、僕、僕ら、神さまのこと。 

















1930529日)

                 

 

挿絵 河原朝生